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2017-04

富士山麓の旅④ - 2014.11.13 Thu

アプト式列車を体験
 11月6日、空振りとはいえ、曲がりなりにも寸又峡見物を終わり、再び、ハラハラしながらの運転で山道を抜ける。すると、道路脇に掛っていた『奥泉駅』の看板が目に付いた。
 看板の指示するように左折すると直ぐの所に駐車場広場があった。ここには竪穴式住居を擬した便所と古代人を模したモニュメントがあった。ということは、この辺りに古代遺跡があるらしいが、私たちがここへ来た目的は蒸気機関車(SL)に乗るためで、これらは横目に見ただけで、目的の駅を探す。
 奥泉駅は、この駐車場広場から下へ階段を降りた所にあった。
 ここが無人駅だと目的が果たせなくなることを心配したが、これは杞憂に終わった。駅は思っていた以上に大きく、少なくとも3、4名の駅員がいた。切符売場の職員に、「汽車ぽっぽが走っているそうですが……」と声をかけると、「はい」という答えが返ってきた。そこでどのように乗ればよいかを尋ねるが、返ってくる話が噛み合わない。改めて、「SLに乗りたい」旨を伝えると、ここ井川線にはSLは走っておらず、アプト式機関車が走る区間だとの説明だった。また、SLが走っているのはこの井川線ではなく、大井川本線の千頭駅から金谷駅の区間であることも付け加えて教えてくれる。
 アプト式機関車とは、聞いたような記憶もあるが、それがどんなものであるかは具体的な知識はなかった。ただ、前回の『紅葉を尋ねて』の旅の折、群馬県の甘良から草津温泉へ走った際に軽井沢の手前で眼鏡橋のような鉄橋の下を通ったが、ここを走っていた汽車がギヤーの助けを借りて急勾配を登り降りしていて、これをアプト式といっていたような記憶が僅かに残っていた。
 駅員の説明によると、アプト式とはギヤーを噛ませることによって急勾配の線路を登り降りするとのことで、私の記憶の半分くらいは間違いではなかったが、さりとて乗りたいという欲望は起きてこなかった。でも、駅員が「アプト式は日本ではここだけしかありません」と強調するのを聞いているうちに『乗ってみようかな』との気になってきた。
 この井川線は、本来だと千頭駅から井川駅までの25.5kmの区間をいうのだが、途中の土砂崩れの復旧ができていないため、現在は千頭から接岨(せっそ)温泉までの運行とのことだった。このため、私たちは、ここ奥泉駅から接岨温泉までを往復することにする。ちなみに、アプト式になっている区間は、アプトいちしろ駅から次の長島ダム駅の1.5kmの間だ。
 この大井川鉄道、井川線の生い立ちならびにアプト化される経緯について述べておく。なお、これは列車内で案内される車内放送が中心で、一部、私の推定も加えた。
 この井川線が開通したのは、そもそもは井川ダムの建設に始まる。開通当初は、井川ダムへの建設資材搬送が目的で、旅客運送は想定外のことであった。それがダム完成後に大井川鉄道が払下げを受けて旅客運送を始めるようになった。だが、元々は資材運搬が目的のため、幅広の客車をそのまま使うことはできず、この線路は金谷駅から千頭駅の本線とは別に、千頭駅から井川駅までを支線扱いとする。そして井川線と呼称、千頭駅で乗り換えの方式で発足している。
 発足当時は、それまでの物資運搬をする路線をそのまま引き継いでいて、アプト式ではなくごく普通のジーゼル機関車に牽引させる方式であった。
 これが井川ダムの下流に新たに長島ダムが建設されると一部線路が水没する恐れが出てくる。このため、この区間を上の方へ線路の付け変えが行われた。こうなると、1000m水平移動する間に90m高度を上げなくてはならなくなってしまい、これまで牽引していたディーゼル機関車では無理になってしまった。したがって、この区間、すなわちアプトいちしろ駅と長島ダム駅の間を電化して、この間だけを電気機関車にけん引させるとともにアプト式を採用して安全を計った。これが10年くらい前のことで、この頃には碓氷峠にあった同種の路線は廃止されていたため、現在ではアプト式を採用しているのはここだけになったということだ。ちなみに、奥泉駅には、日本とスイスの両国旗が飾られていることから推し、ここで用いられているアプト式機関車はスイスから輸入されたものとみられる。
 列車が動き出すと、カーブが多いせいか、客車が古いせいか、原因は分からないがギギィ、ガガァと客車を軋ませるすごい音を立てながら走り始める。右手眼下には常に大井川(支流?)が見下ろせ、なかなか風情があり、また、見所になると車内放送もあって、私のように事前知識のない者にとっても飽きさせることはなかった。
 次の駅でアプト式の電気機関車を付けて、これに押させるための連結作業が行われ、この間、この作業を見物することもできる。とはいっても、私たちが見慣れている電車の連結作業と何ら変わることもない。違っている、変わっているというと、線路の真ん中にもう1本の見慣れぬ複雑な形状をした線路が別に敷設されていることくらいである。この真ん中のものが機関車の歯車を受けて滑り防止装置だと分かる。でも、専門家でもない私たちがみても、『あぁ、そうか』と思うだけで、他の感情が湧くわけではない。
 再び列車が動き出したが、別段に乗り心地が変わるわけでもなく、ギギィ、ガガァの音は相変わらず、また、その他の音が加わることもない。体験上、アプト式列車に乗ったという体験、このことを自己満足しただけに終わった。
 長島ダム駅で、先ほど取り付けたアプト式機関車を取り外し、身軽になって次に向かって発車していく。これと時を同じくして上り列車が到着、先ほど私たちの列車から取り外したアプト式機関車を装着して、これまた私たちとは反対の方へ去っていった。
 こうして他愛ないというか、何事もなかったかのようなアプト式列車への乗車体験は終わった。
 接岨温泉で折り返し運転をしている関係上、30分くらいの待ち時間で帰りの車両に乗ることができ、12時30分頃、奥泉駅へ帰ってきた。
沿線風景

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