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2017-10

はてなの茶碗 - 2011.02.18 Fri

 上方落語の重鎮であり、人間国宝の桂米朝師匠が得意とする噺(はなし)の1つに『はてなの茶碗』がある。私も、ラジオで1度だけ、この噺を聴いたことがある。
 噺の内容を掻い摘(かいつま)んで説明すると、概ね次のようだ。
 京都に茶道具店を営む金兵衛という人がいた。この人物は茶器の目利きとしても名高く、茶金さんとして親しまれていた。今でいうなら『なんでも鑑定団』の中島誠之助さんのような存在だったと推定される。
 ある日、この茶金さんが茶店で茶を一杯飲み、帰りがけに『はてな』と首を傾(かし)げて立ち去った。これを脇で見ていた担ぎ売り(店を持たない行商人)の油屋が、『目利きの茶金さんが首を傾げるくらいだから余ほどの名器だ』と思い込んで大金を奮発してこの茶碗を譲り受ける。
 後日、油屋は茶金さんのもとに件(くだん)の茶碗を持ち込んで鑑定を依頼したところ、安物の清水焼だと教えられる。では何故、『はてな』と首を傾げたかを尋ねると、ヒビも入っていないのに茶が漏れるので『はてな』と首を傾げたのだとの答えが返ってきた。
 油屋は大阪の商家の息子であったが勘当されて京都にきて、この商売で細々と生計を立てていることを知った茶金さんが、憐憫(れんびん)の情を抱き、何がしかの金を与えて帰す。
 茶金さんが、その茶碗を高貴な公家にみせると面白い茶碗だと宮廷内でも評判になり、その話が時の帝(みかど)にも伝わる。帝も興味を示されてご覧になる。こうして茶碗は段々と出世して、帝によって『はてなの茶碗』と箱書きされるまでになる。
 この噂話が大阪の豪商、鴻池さんの耳に入り、この茶碗に千両の値が付いて、ここに引き取られた。この千両を茶金さんと油屋が折半した。
 この後日談があって、落語は下げとなるのだが、この部分は省略する。
 私が、何故、このような落語を思い出したかというと、油屋と同じような体験をしたためだ。
 昨朝、何時ものようにマグカップで紅茶を飲んでいると、カップを置いたテーブルの上が濡れてきた。『あれっ、零(こぼ)したかな』とカップを持ち上げると、底からポトポトと水が垂れている。カップの底を布巾で綺麗に拭いて、再びテーブルに置き、暫くすると、また、テーブルの上が濡れてくる。
 今度は、カップを空にして注意深く観察するが、穴も開いていないのはもちろんのこと、ヒビすらも入っていない。
 念のため、カップを綺麗に拭き、改めて水を注いで、ティッシュペーパーの上に置いておいたら、少し時間が経過するとティッシュペーパーは水浸しだった。確実に漏れていることが、この段階で確定した。
 こんな落語が存在するくらいだから、ヒビの入っていない茶碗が水漏れすることが不思議ではないかもしれないが、私としては寡聞にして知らない。
 このカップが瀬戸物として代表される生活雑器なら、水漏れが起こっても歯牙にもかけなかっただろうが、このカップのメーカーが世界にも名の知られたノリタケ・カンパニーのものだったので、驚きも一入(ひとしお)であった。
 ノリタケに訊いてみると、「そんな話は聞いたことがないので、一度、カップを見せて欲しい」ということだった。このため、送ることを約束した。
 『はてなの茶碗』は、出世に出世を重ねて、鴻池さんに渡ったときには千両の値が付いた。ところで、千両というと、今の価値はどのくらいであろう。江戸時代には、『十両盗むと首が飛ぶ』といわれていた。人の首が飛ぶとなれば、命の価値が低かったとしても10万円では安すぎる。十両は少なくみても100万円にはなろう。――と、仮定すると千両は1億円である。
 先ずは製造物責任者のノリタケに『?・マグカップ』と箱書きをさせる。次に、帝というと天皇陛下であるが、これは怖れ多いことなので、名古屋市長の河村たかしさんに「珍しいカップだぎゃぁ」と褒めてもらう。最後に、名古屋きっての金持ちに「ぜひ、分けてくれ」と言ってもらわねばならない。これは誰が適任だろうか。一昔前なら、松坂屋の伊藤次郎左衛門さんあたりだろうが、今では誰がよかろう。トヨタ自動車の豊田章男さんあたりになるだろうか。
 ――と、1億円の夢は膨らむ一方である。

?・マグカップ

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