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2017-10

甲武信岳(こぶしだけ・2475m) - 2011.05.17 Tue

 5月14日、目的を達成して気分良く横尾山から下山する。先ほど、満車だった駐車場の車は帰った後で、残っていたのは私たちの車のみだった。早速、靴を履き替えて、先ほどやってきた道を引き返して川上村へと向かう。
 梓山手前の集落にあったスーパーで食料品を買い増しする予定だったが、田舎町の小さい店なので欲しい品物はなく、パンと乾きもの(つまみ)を購入しただけで終わる。これで、今夕の質素な晩餐と明日の昼食までの準備が整ったので、直ちに毛木平の駐車場に向かう。
 駐車場近くまでは手入れの行き届いた舗装道路だったが、農地が途切れると共に舗装も終わって地道に変わってくる。『嫌だな』と思っていたが、この凸凹道も100mくらいの間だけのことだったので、ヤレヤレであった。
 駐車場に到着したのは、15時30分前後だったと思われる。
 このと駐車場は60台収容可能な広い駐車スペース部分とトイレ棟および休憩棟からできた立派なものであった。
 ちょうど、1組(4名)が下山してきていたところだったので、早速、情報収集に取り掛かる。
 すると、千曲川源流の手前から雪が残っていて、それもズボズボと踏み抜くので始末が悪かったとのことで、アイゼンを持参するように勧められた。私は、雪などはとっくに解けてなくなっているとばかり思い込んでいたので、この情報はありがたかった。ちなみに、アイゼン、ピッケルも重登山靴も車に積んであるので、何が必要となってもすぐさま対応できる態勢が整っている。このため、心の準備がなくとも道具の準備は万全だ。
 姫君は6本爪の軽アイゼンを持っているが、私は持っていない。このため、重登山靴に12本歯のアイゼンにするか、軽登山靴に雪渓用の4本爪のアイゼンで行くか迷うところだが、アイゼンを使用しない前提に後者で行くことにする。
 この雪渓用のアイゼンは、20年近くも前に釼沢雪渓を歩くために購入した。この頃は、私は山のことなど何にも知らなかった。もっとも、この釼岳が初めてのアルプスだったので、当然といえば当然のことだ。
 この山域へ行くには、アイゼンが必携品だとガイドブックに書いてあったので、アイゼンなる道具を買いに行く。当時の知識で山用品屋というと名古屋駅前にあった好日山荘のみだったので、ここへ出向くが店仕舞いした後だった。次にアルペンというスポーツ専門店に出かけるが、登山用品の扱いは少なく、アイゼンは置いてなかった。こうなると焦ってくる。CBCテレビの横手に山屋があると聞いて訪れるも夏は需要がないので倉庫に仕舞ってあって店頭にはないとのことだった。次に知った山屋は繁華街の今池にあった小さい店だった。薄暗い山小屋風の作りだったとの記憶はうっすらと残っているが、店の名前も場所も正確な記憶は残っていない。でも、ここに雪渓用のアイゼンが置いてあったので、姫君と一緒に購入した。こんな思い出の品を今になって使用するとは思ってもみなかった。
 こうして準備を整えると、もうやることがないので、明るいうちから酒宴となる。その後、暫くの記憶が残っているが、間もなく、おぼろげな記憶も残っていなくなるのは何時ものことだ。
 夜中に目を覚ましてトイレに行くと、小さい月が明るく地上を照らしていてライトなしでも歩ける状態だったが、それでも多くの星の姿を捉えることができ、明日の好天を保証しているかのようであった。
 明け方近くになると外は相当冷え込んだようで、寒さで目を覚まして布団をかけ直したほどだったが、再び、ぐっすりと寝込んだようだ。
 目を覚ましたのは、ピヨ、ピヨと澄んだ鳥の声であった。何の鳥かは分からなかったが、その後にウグイスも鳴き始めた。5時前で、辺りが白み始めた頃だった。お湯を沸かして姫君のコーヒー、私の日本茶の準備をする。食欲は、それほどないので歩きながら食べることにする。
 本日のコースは、往路3時間50分、復路3時間15分の往復7時間05分を要するロングコースである。これに休憩、私たちの脚力のハンディも加えると、1時間30分くらいは余分にかかることも考えなくてはならない。すると私たちにとっては8時間30分コースということになる。心してかかる必要がある。
 昨日の情報では、上は雪が積もっていて花の期待はできず、また、下のほうもスミレが目立つくらいで、花の収穫は望めそうもないらしい。このため、大きなカメラは持っていかないことにして、代わりにお茶を3ℓと多いめに持っていく。
 こうして車の中で出発の準備をしていると、昨日、この駐車場で泊まった他の3台の車の主たちが、次々に出発して行く。こうなると私たちが、置いてきぼりにあったようで焦ってくる。
 外へ出ると、まだ寒い。気温は分からないが、吐く息が白くみえるので、1、2度といったところではないかと思われた。これでは半袖のティシャツと長袖の夏用のスポーツシャツだけでは寒くて仕方がない。このため、車中で着ていたフリースの上着を余分に着ることにした。こんなことは滅多になく、この日が如何に寒かったかが分かる。

毛木平駐車場

 5時52分、駐車場を後にして、甲武信岳に向かって歩き始める。
 まず最初に、本日、私たちの歩く西沢コース(千曲川源流コース)について説明しておく。
 この西沢コースが、いくつもある甲武信岳の登山ルートとしてはメーンルートになっている。駐車場のある毛木場の近くを千曲川(新潟県に入ると信濃川になる)が流れている。毛木場の少し上流で、これが二股に分かれている。左側が十文字峠へ通じる東沢。右側が私たちの歩く西沢である。
 西沢コースは、この沢の水が枯れるまで遡上して行く。水の枯れた地点が信濃川・千曲川源流の水源地標が建てられている。ここまでは穏やかな道で、足元さえ固めれば山歩きの経験の少ない一般ハイカーでも歩くことができるハイキングコースとなっている。
 源流から先は登山者の領分で、瑞がき山、金峰山、甲武信岳、三宝山、三国山を繋ぐ長野県と山梨県を分ける主稜線へ一気に登り上がり、ここから稜線を辿って甲武信岳へ登るというものだ。
 距離については計っていないので詳細を語ることはできないが、高度については、登山口の毛木場駐車場が1460m、ナメ(滑)滝1783m、千曲川源流2200m、そして頂上が2475mである。
 要するに、源流までは標高差740mを長い距離をダラダラと登って行き、これから先は300m弱の標高差を一気に登るという具合だ。

ハシリドコロ

 登山口から車道のように広い道、未舗装の地道を歩いて行く。1分も歩くと直進と右折する道路が2手に分かれているので、ここを標識に従い右折する。なお、標識に従うと言っても、これの立て方が不親切なので初めて歩く登山者にとっては分かり辛い。
 登山口から10分弱ほど歩くと、再び直進と右折の2股に分かれている。直進が十文字峠、右折が源流の方向だ。ここを右手に折れれば、その後には分岐はなく、道を間違えるような心配はない。
 こんな道をかじかんだ指先を動かしながら歩いて行くが、指先が温まるにはだいぶ時間が必要だった。
 6時18分、道の真ん中を大きな岩が塞ぎ、その岩の上にケルンが積まれた場所にやってきた。ここまでの道は、車を乗り入れることが可能なくらいの幅員の立派な道であったが、ここからはやや道幅が狭くなり、車道から登山道に変わった感じがする。とはいっても、私たちの地元の鈴鹿の山の人がやっと通れる広さの悪路を歩き慣れた者にとっては、これとて立派すぎる登山道だと言える。いうなれば、これまでが大型トラックが通れた道であったのに対して、ここから先はリャアカーの通る道という違いだ。
 十文字峠分岐からは西沢沿いに歩くのだが、この谷は変化に富んでいて美しい谷だ。また、この時期は雪解け水が加わって水量が多いらしく、岩を食んで白く泡立った水、また、岩に砕けて出す大きな水音など、目で楽しみ、耳で楽しんで歩いて行く。
 とある場所から道は大きく沢から離れて高巻きコースを採るようになる。なぜ、こんな道を作ったのかは不詳だが、沢から最も離れたところでは沢音も殆ど聞こえなくなったほどだ。
 そして、この高巻きコースはカラマツ林の中、またダケカンパの林の中を通過して行く。
 私たちは、本日で3日連続の山歩きになる。このためか、足への疲労がだいぶ溜まっていることが自覚でき、ゴールまで歩き通せるかという不安も頭の中で渦巻いていた。
 このとき、出発から1時間ばかりが経過していたので、ダケカンパの林の中で第1回目の休憩を採る。ザックを降ろして朝食代わりにパンを食べ、水分補給も行っておく。そして、陽が差し始めて少し暖かくなったので、フリースを脱いでザックの中へ押し込む。なお、ここでの休憩時間は8分。
 6時59分、再び、歩き始める。
 休憩場所から歩くこと30分ばかり(7時35分)で、また、谷へ降りる。ここには滑(なめ)滝という標識が出ていた。上流を見ると1枚岩からを緩やかに流れ落ちる滝、いわゆる滑滝が見えていた。
 ここからは西沢の左岸沿いを付かず離れずに遡上して行く。これまでの歩き易い土の道から岩のゴロゴロした歩き難い道に変わってきたが、沢の中を徒渉しながら歩くよりは数当倍も楽である。
 滑滝から20分くらい歩いた所で支沢を横切った。この支沢は深い雪に埋まって雪渓となっていたために雪の上を渡ったが、距離も短く特に問題はなかった。
 ここを過ぎると、『千曲川源流まで1.45km』という標識が建てられていた。これまでも標識は建っていたが、距離は100m単位だったのが、ここの標識は10m単位に刻んである。それほど正確に測って建てるわけではないのにえらく細かく刻んだものだと、妙に気になった。
 ここでは登山者2人が休んでいた。私たちの前に3組が発っているはずなので、その1組に追い付いたことになる。ここまで来るうちに別々の2人に追い抜かれているが、彼らの何れも私と同じような年代なのにえらく健脚だった。これで追い抜かれた分を取り返すことができたと変なことを考えていた。
 8時07分、西沢に架かった橋を渡り、初めて西沢右岸に渡った。
 今、渡った橋は、丸太5、6本を束ねて作った広い橋で、滑り止めも付けられており、鈴鹿の山中では考えられない立派なものであった。
 ここから暫くは谷沿いの道だったが、支沢を2つばかり越えた辺りから、登山道が雪で埋まるようになる。そして、最初は7部3部で雪が少なかったものが、次第に雪の部分が多くなり、最後のほうになると地道は姿を消し、雪で総てが覆い隠されるようになった。
 雪なら雪でもよいが、昨日、解けた部分が昨夜のうちに凍って透明感を帯びた部分がある。雪だけなら多少凍っていても滑らずに歩くことはできるが、氷の部分は如何ともし難い。避けて通るに越したことはない。そうするには足跡のない雪の部分を歩きたくなるが、こんな場所を歩くとズボッと雪を踏み抜くときがある。こうなると靴の中に雪が入って冷たいので嫌だし、何回もこんなことをしていると靴の中が濡れてしまう懸念がある。何処かでスパッツを着けなければと考えて歩いているとちょっと大きな木の杭が埋め込まれている場所にやってきた。木に彫り込まれた文字を読むと、ここが信濃川・千曲川源流だということが分かった。
 なお、この源流到着は、8時45分であった。
 ここで私は、長袖のシャツを脱いで半袖のティシャツ姿になるとともにスパッツを着けることにする。姫君はスパッツに加えてアイゼンも付けるとことになる。だが、姫君は、6本爪の軽アイゼン(カジタックス=廃業)の付け方を覚える気がないようなので困る。「ねぇ、どうするんだった?」と突っ立ったままである。このアイゼンは、私も得意ではないというか、時々しか使わないので、覚えたつもりでも忘れてしまっている。でも、何とか思い出して付けることができた。こんなことをやっていたのに加えて先ほどの休憩と同じようにパンを食べたりで、ここでの休憩は17分の大休憩となった。この間、先ほどの2人連れがやってきて追い抜いて行った。
 9時02分、長い休憩を終えて源流を出発することができた。
 ここからは稜線からの斜面を登り上がることになるが、これまでのだらだらした登りとは異なって、急勾配の斜面を一気に登り上がることになる。
 総てが雪に覆われた斜面ながら、樹林の中で身体を支える手掛かりには困らないので、思ったよりは楽に登ることができる。
 ちょうど、源流から20分で稜線に登り上がることができる。ここまでくれば稜線歩きで、これまでのような急傾斜ではなくなる。雪もあったり、なかったりとなるので、姫君もアイゼンを外す。

甲武信岳頂上

 そして頂上直下の短い急斜面を登り上がると、そこは甲武信岳の頂上であった。
 頂上で真っ先に目に入ってきたのは、何といっても雲1つない青空だった。そして、その青空のもとに白いまだら模様が入った八ヶ岳、その手前の左側には雪のない金峰山と国師ヶ岳、それに続いて真白な南アルプスの甲斐駒ヶ岳だろうか。少し後になって富士山が綺麗に見えているのにも気付いた。こんな天気の良い頂上に立てるのは年に何回もあることではないので大いに満足した。
 ここでは樹林の中とは異なって遮るものはないので、冷たいそよ風が裸の腕を撫でていくのがやや小寒いが、上着を着るほどではないのでそのままでいた。
 1通り写真を撮ると、安堵の朝食だ。これまでパンを2人で2つを食べただけだったので、ここではお握りを食し、大いに英気を養った。
 頂上での32分の休憩を終えて、同じ道を帰ることにする。
 10時25分に頂上を出発、11時05分に源流、11時59分に滑滝、そして13時32分に駐車場に帰り着いた。
 こうして、往路3時間36分、往路の2回の休憩と頂上での休憩の合計が57分、復路2時間57分の総計7時間30分に及ぶ長い甲武信岳登山を終えることができてホッとした。

甲武信山山頂から見た富士山

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