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2011-01

益税・節税 - 2011.01.31 Mon

 通常国会が開催され、これから来年度予算が審議されることになる。
 今年度に引き続き、税収を上回る国債発行を前提にした予算案のようで、とてもまともな国で行われる審議とはおもえないバカげた論戦が展開される見込みだ。
 こんな状況下であるだけに、消費税の増税は暗黙の了解事項である如き自説を展開する政治家、評論家が出現してきており、一般国民の中でも増税を歓迎する、もしくは避けて通れないと容認する者が増えているような印象である。
 こんな時節柄か、1月29日の朝日新聞の声欄に、『増税より益税解消を優先せよ』という投稿が掲載されていた。
 投稿者によると、『益税は、消費者が支払った消費税が国庫に納付されずに事業者の手元に残るカネ』と、益税を定義している。そして、『一部事業者に対し、国家が税金の不払いを容認しているに近い、極めて不公平な仕組み』だと、消費税の仕組みに欠陥があると指摘している。次に具体例を上げたようにみせているが、『税理士が言った。シンクタンクの研究成果がある』という仄聞の枠から一歩も出ぬもので、どのように益税が生ずるかは具体的には言及していない。
 でも、これを読んだ大半の人は、『さも、ありなん』と益税を懐にする一部事業者なり、消費税の仕組みの欠陥なりに憤りを覚えるだろう。また、朝日新聞もまったく的外れのこととは考えなかったので、この投稿を取り上げたのだと理解する。
 このブログの前身である『ヨレヨレ山便り』(08年11月20日)の『消費税』で述べたように、益税などという脱税まがいは存在しない。これが存在するかのように映るのは、一般消費者が消費税を支払っていると誤解しているために起こる思い込み現象に過ぎない。
 消費税法上では、消費税の納付義務者、すなわち納税者は事業者であって消費者ではない。したがって、消費者は、1円たりとも消費税を支払っていないということになる。
 例えば、ガソリン1リットルを135円で購入したとする。この中には揮発油税ほか、諸々の税がかかっており、元々のガソリンの原価の2倍以上になっているはずである。でも、私たちは、仮にガソリン65円と税金分70円を負担するので135円になるとは考えない。ガソリン1リットルを135円で買い、この中に結果的には税金分の70円含まれていると考える。このため、私たち、消費者は納税者意識を持っていないはずだ。
 このように消費者が消費税を支払うのではないという事実を審らかにすると、事業者によっては消費者に税金分を転嫁できないことも考慮して、政府が嘘の説明をしたか、はたまた曖昧な説明で真実を糊塗し、結果的に国民を騙してきた。
 04年に価格の表示を税込みで表示することを義務付けたことにより、この時点で政府は嘘から解放されたことになったと考えるであろうが、大多数の国民は未だに消費者が消費税の納税者だと思い込んでいる。
 話は変わるが、益税という言葉が使われた以前には、節税という言葉が生まれ、現在でも使われている。
 益税が投稿者の考えるように脱税に近い響きがあるのに対して、節税は税の納付額を少なくするもので脱税のような罪悪感を伴わない響きがある。いずれにしても、益税というものがあり得ないと同様に、節税なるものもあり得ない。
 税法を熟知したうえで算出した税額と、税法に疎くて控除などを受けずに算出した税額との間に差異が生じただけの話で、どちらも正しく納税したことになる。だいたいにおいて、税金が節約できるという性格のものかどうかは、少し考えれば分かりそうなものだ。
 このように益税の恩恵を受けるといえば「けしからん」と怒り、節税ができたと聞いて「いいなぁ」と羨ましいと単純に思い込むことは、日本人の美徳だと言えばそうであろうが、これが財政危機だと聞いて増税を素直に受け入れることにも繋がるとなると、一概に美徳だと喜んでもいられないとおもうが……。

投稿文

《付記》
 この投稿者のいう益税は、事務処理の煩雑さを回避するために計算を簡素化する措置により、消費税として算出されない少なからざる額が発生するというものだが、こんな瑣末(さまつ)なことを取り上げていたらキリがない。
 私が現役の頃の事実を例示する。
 私は、調査業を自営していた。必要とする経費は、事務所費のほか、交通費、調査実費などなどであった。調査実費の中には、役所へ支払う印紙や証紙が結構なウェートを占めていた。これら印紙や証紙は消費税の対象外の支払いである。本来なら、これらには消費税は支払わないので、経費から除外して計算するのが正しい消費税の計算の仕方であろうが、これらの総てを正確に計算するとなると大変な労力が必要になる。このことは税務当局も分かっているので、一括で消費税がかかっているものと見做して計算(仕入れ控除)することを認めていた。ちなみに、私は免税業者であったので、どのみち計算することはなかったが……。
 このような措置は、いろいろな場面で行われている。
 例えば、サラリーマンには自営業者の必要経費に当たる分を、一定の割合で控除される。いわゆるサラリーマン控除というものがある。サラリーマンが自分の所得に応じて控除される金額に相当する領収証を集めるとなると大変だと思う。とても、この金額に相当する経費は使っていないはずだ。言い方を変えれば、サラリーマンが控除分だけを実際に費消していては家計が成り立たっていかないと思う。
 このようなことを考えると、投稿者の正義は総てにわたって正鵠を射ているとは言い難い。

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